魔子「ねえ、鬼子の住んでるとこってどんなとこ?」
鬼子「ん? なぁんにもない、山の奥だよ。特にこれといった特徴は無いかなあ」
魔子「へぇー。寂しくないの?」
鬼子「え、そんなことはないよ。お友達がたくさんいるから」
魔子「友達?」
鬼子「うん、だけど夜はみんな凶暴になっちゃうのが玉に瑕かなあ」
魔子「なになに、どんな子たちなの? クマとかオオカミとか?」
鬼子「クマやオオカミもいるけど、夜凶暴になっちゃうのは……あれ? あの子達ってなんて種類はなんなんだろう? たぶんミミズ、なのかな。
……とにかくその子たちは夜になるとヌルヌルヌメヌメして凶暴になっちゃうんだ。だから遊びに来る時は昼間のうちに来てね!」
魔子「え、でもミミズでしょ? 私、ミミズに負けるほど弱く無いわよ?」
鬼子「何言ってるの! ものすごくおっきくて、クマのダイゴロウくんも痔になるほど苛められたって言ってたんだよ!
夜のあの子達はとんでもなく強いんだからね! 馬鹿にしちゃ駄目だよ」
魔子「え、痔? ダイゴロウくん? ……もしかして、一部の女の子たちに人気あったりする?」
鬼子「あれ? よくわかったね? うん、何人かあの子達にメロメロの女の子がいるよ」
魔子(Oh……tentacle……)
魔子「ねぇ、あなたってなんでいつもお面持ってるの?」
鬼子「えっ」
魔子「えっ」
鬼子「……普通持ち歩きませんか?」
魔子「いやいや、持ち歩かないわよ」
鬼子「え、じゃあどうやってヒーローごっことかやるんですか?」
魔子「え、そんな子供みたいな遊びしてるの?」
鬼子「ヒーローごっこ馬鹿にするとクマのダイゴロウくんが怒りますよ」
魔子「……所詮クマでしょ?」
鬼子「……その言葉は真に遺憾です。訂正してください」
魔子「ご、ごめんなさい」
鬼子「とはいえ、まあ確かに所詮クマなんですけどね。ミミズさんにも負けちゃうし」
魔子「…………」
ヒーローごっこ
ダイゴロウくん「ウガァァァ!(ふははは覚悟しろ般若仮面!)」バゴス
鬼子「グエーッ!」
鬼子「……」
魔子「ん?どうしたの鬼子?」
鬼子「いや…魔子ちゃんの服って露出度高いなあ、って思って」
魔子「え?何?着たいの?」
鬼子「え…や、そうゆうんじゃなくって…」
魔子「ふふふ…じゃあ今からウチに来なさいよ」
鬼子「え?い、いいよ…」
魔子「いいからいいから♪」グイッ
鬼子「ちょ、ちょっとお!」
〜魔子の家にて〜
魔子「うふふふ〜、次はこれを履いてみましょうかぁ〜♪」
鬼子「やっ…そんな恥ずかしいの履けないよう…って、きゃあぁっ!」
魔子「ほらほら、そんな色気のないの早く脱いじゃいなさい…あら、これもこれで可愛いわね…」
鬼子「ひゃんっ…だめえぇっ!!」
鬼子「うう〜、寒い」
魔子「そうかしら?」
鬼子「魔子ちゃん、よくそんな服で寒くないねー。胸元とか特に」
魔子「胸元はあなたと違って豊かだから、その分寒くないのよ♪」
鬼子「……ギリッ」
魔子「すいませんでしたごめんなさい」
ガラッ!
鬼子「鹿退治よっ!」
倭子&小日本「」
鬼子「さあ早く!」
小日本「え?ひぃゃぁぅ! 痛いです! 耳を引っ張らないでくださいー あああ、ああああー!」
倭子「こらこら、いきなり帰ってきて鹿退治って言われても何のことかわからないでしょう? まず説明をお願いするわ」
鬼子「ご、ごめんお姉」
倭子「それで?」
鬼子「えーと、そう!里の人が困ってたから助けようと思って」
倭子「人助け?」
鬼子「そうそう!近頃鹿の被害が後を絶たないんだって」
倭子「・・・鹿は人に害を与えるような危険思考の持ち主だったかしら?」
鬼子「鹿キックで入院とかじゃなくて、食べちゃうのが迷惑って聞こえた!」
小日本「確かに鹿さんは農作物の芽や、人さんが育てている木の皮を食べちゃったりしますね はうー」サスサス
倭子「ああ」
鬼子「そう!それで、近ごろ鹿がものすごい増えてるんだって!だから数を減らしに」
小日本「だ、だめです! 私たちは人さんの道理から外れた存在、個々別々に影響のあることならまだしも食物連鎖に関わるようなことに手を出すなんてどうなることフグゥ・・・!!?」
倭子「まぁまぁシャオ(小)ちゃん落ち着いて? [退治]と表現しているんだからぁ、無差別に○してしまって解決なんてことはなさそうよ?」
小日本「フッ・・・フグフグゥ!」ジタバタ
鬼子「そうだぜ。 無差別に○すなんてことは猟師でもできる! そんなんじゃおもしろくないから片っ端から懲らしめてやるのさっ!」
倭子「(数が増えてしまったところを懲らしめてどうするのかしら?)」
倭子「シャオちゃんはどう思う?」
小日本「プハッ! え、えーと、、近年鹿さんの数が増えてきたのは積雪量が減って越冬できる個体が増えたからと言われています。
自然現象が原因で生息数が増えて、餌場を求めているところを懲らしめても、それは鹿さんが困るだけで何の解決ももたらさない気がします・・・です。」
鬼子「」
小日本「あの・・・グー(鬼)姉ぇ? 怒らnフグッ!?」
倭子「(言葉で説明させるのもめんどうだから、一度やらせてあげればどうかしら?)」
小日本「(だめそうだったら止めるということですか? お姉さまが)」
倭子「(そうそう。 誰が止めるかはTPOでね)」ニコッ
小日本「」
倭子「いいわね、グーちゃんをリーダーにして一度やってみましょう」
鬼子「ほんとっ!? じゃあ準備してくるから二人もしといてくれよな!」ピュー
支那子「竹島は鬼子のでいいけど、釣魚島は私がもらってあげるんだから、ありがたく差し出しなさい!」
鬼子「…ふぇえ!?だ、ダメですよぅ」
棒子「独島は俺たちがもらうニダ!尖閣諸島?鬼子のにしといてやるニダ!」
鬼子「…そんなぁ、無理ですよぅ」
魔子「多数決したらいいじゃない?えーっと、尖閣諸島は鬼子2票、支那子1票ね。竹島は鬼子2票、棒子1票ね☆」
支那子、棒子「な、なんだってーー!!」
鬼子「ありがとです。鬼子、支那ちゃんも棒子ちゃんも本当はいい人だってわかってましたもの、本当にうれしい」
鬼子の目に涙が光る。
そして背景では支那子と棒子が責任の擦り付け合いをいつまでもしているのでした、とさ。
魔子「ねぇ、そのお面ってさー」
鬼子「これがどうかしたの?」
魔子「勝手に動いたりすんの?」
鬼子「しっしないよ!怖いこと言わないでよ…もう…」
魔子「いや、でもさっき口開いてたのに今は…」
鬼子「いやぁあああああ!!!」
――人のいない山奥の小屋。
魔子「(ジロジロ)」
鬼子「・・・・・・?」
魔子「・・・うーん・・・」
鬼子「魔子さん?私、何か顔についてますか・・・?」
魔子「ちっちゃいわね」
鬼子「!?」
魔子「・・・うん・・・、やっぱちっちゃいわ」
鬼子「な、なにがですか!」
魔子「何が・・・?ってそりゃ、角に決まってるでしょ、角」
鬼子「え?あ・・・あぅ・・・角の話でしたか・・・」
魔子「ふふふ、・・・もしかして胸の話だとでも勘違いしたの?意外と色欲鬼ね、貴女♪」
鬼子「ち、ちがいますちがいますっ!//」
魔子「そんなに気にする必要ないじゃない・・・・・・丁度良い大きさなのですしねぇ♪」
鬼子「ひゃっ、ちょっ、ゃめ・・・やめてくださ、いぃっ!」
魔子「とまあ冗談は置いといて、角」
鬼子「はぁ・・・はぁ・・・もう、いったいなんですかっ・・・」
魔子「貴女、わざと短くしてるでしょ?」
鬼子「・・・・・・・・・・・・。」
魔子「全く・・・鬼のプライドである角を短くしてどうするのよ・・・そんなに山の下の者達と仲良くしたい?」
鬼子「私は・・・みんなと仲良くしたいです。魔子さんとも、山の下の方々とも。・・・駄目でしょうか」
魔子「あらそう。・・・駄目なんてことはないわ。でも、ここには貴女の角を見て怯える者はいないわ?だから――」
魔子「――せめて私達がいる時だけは自らを誇り、鬼として対等で喋りなさいな。それに貴女の角は、綺麗だしね」
鬼子「・・・はい。魔子さん、ありがとうございます」
魔子「いえいえ。それで?意外と胸が大きかったりCぐらいあったりする話だったかしら?」
鬼子「ち、ちょっと魔子さん!ちがいますよ、もう・・・//」
「鬼子姉様お昼寝で御座いますか?」
居間でまどろむ鬼子を少女が不思議そうに覗き込んだ
昨今曇りがちの天気のように、鬼子は少し怪訝な面持ちと何かを払うような仕草で呟く
鬼子「偏西風のせいで急に寒うなっての、こう薄着ではさすがに敵わん」
「では膝掛けなどお持ちいたしましょう」
鬼子「東洋、どこぞにカシミアのショールがあろう、それを持て」
東洋と呼ばれたその少女は足を止め、ショートボブの淡い色の髪を翻し
鬼子に向かい直すとこう言い放った
東洋「東洋鬼、とフルネームでお呼び下さいませ、お姉様。さもなくば・・・」
鬼子「おお恐や、恐や」
我が子を愛でるように微笑む鬼子、オレンジのショールと笑顔の東洋鬼
ああ、秋あらねどもちはやぶる
鬼子「……ジー」
魔子「ん?どしたの?」
鬼子「え?い、いや、何でも…」
魔子「…アタシの胸、見てたでしょ?」
鬼子「ッ!…つい、うらやましくて…」
魔子「ちょうどいい大きさで、アタシは好きなんだけどなー」
鬼子「でも、もう少しくらいは欲しいな…」
魔子「そういえば、揉むと大きくなるって話を聞いたことあるわね…
そうだ、二人で揉み合いしたら、両方大きくなってお互い得するんじゃない?」
鬼子「えっ、でも、恥ずかしいよ…」
魔子「いいからいいから♪今からアタシの家に来なさいよ。
…大きく、なりたいんでしょ?」
鬼子「…うん。がんばる」
魔子(フフフ…計画通り。楽しい夜になりそうだわ…)
『っていうか、あんたいったい何なのよ』
「…?小日本ちゃん、何か言った?」
「何もいってないでちよ?」
『ここだ、ここ』
「…わー!おねえたまの頭の般若のお面がしゃべったでちー!」
「わー!可愛いー!」
「おねえたま、可愛いはないでち。はんにゃでちよ。というか、お面がしゃべるなんてありえないでち」
『だまれロリ娘』
「なんでっちってー!このお面、なまいきでち!」
「まぁまぁ」
『で…何なのよあんた』
(お面のくせにしゃべるあんたこそなんなんでちか)
「何って、日本鬼子(ひのもとおにこ)です」
『何でもかんでも擬人化すればいいってもんじゃないでしょうが』
「そ、そんなこと私に言われましても…」
『かわいこぶんな。鬼の癖に。あれだろう。どうせ夜中になると血の滴る生肝を探して町をさ迷うんだろう』
「はうぅ…そんなことはしません。ホルモンは好きですけど」
『この娘、まだ言うか。いい加減に諦めて語尾を「だっちゃ」にしろ』
「わけがわかりません!」
(すごくしゅーるな光景でちな)
-こうして、世界平和を目指す鬼娘とお面の旅は始まった-
鬼子母神「ねえ貴方たち〜夕食ができたわよ。」
パパ修羅「今日は何だい?」
鬼子母神「今日はカレーよ」
日本鬼子「わーい、カレーだ!嬉しいなー♪」
小日本「わーいーわーい♪」
鈴鹿御前「カレーぐらいで騒がないの」
鬼子母神「あなたも人のこと言えないわよ」
パパ修羅「終了」
日本鬼子「再開」
小日本「再開しないで!そんなことよりお肉が欲しいな〜」
鬼子母神「ジャガイモあげるわ」
鈴鹿御前「間違えてますよお母様」
日本鬼子「タマネギあげるよ!」
パパ修羅「よしよし、じゃあパパのをあげよう」
小日本「パパありがと〜♪」
日本鬼子「玉ねぎあげるよ!」
鬼子母神「玉ねぎ嫌いだからって、人の皿にいれないの!」
日本鬼子「玉ねぎあげるよ!」
鈴鹿御前「いい加減にして!!」
鬼子母神「そんなことしても誰も食べてくれないわよ」
幽霊「こんばんわ。卒塔婆の販売に参りました」
鬼子母神「結構です」
パパ修羅「そういう時は『要りません』と言うべきだな」
日本鬼子「じゃあ玉ねぎあげるよ!」
小日本「そこまでしなくても(笑)」
「てんてんてまりよ、てんてまり」
不気味なほどに赤く赤く、染まった空。四方を囲む山々からは鳥たちのざわめき。
ふと、後ろを振り返ると、てまりをつく少女の姿が在った。
少女はうすくうすくほほ笑む。研ぎ澄まされた刃のように……。
主人公「鬼子っ! おれがわからないのか! もうやめてくれ!」
鬼子「グオオオオオオォォォォォォオォオオォォォォン・・・・・・」
ズシーン・・・・・・ズシーン・・・・・・
主人公「くそ・・・・・・おれは何て無力なんだ・・・・・・っ!」
ライバル「あまったれるんじゃねえ!」バキィ!
主人公「グハっ・・・・・・なにしやがる!」
ライバル「いま一番苦しんでるのは鬼子ちゃんだ! それなのに・・・・・・
お前はこんなところでなにチンタラしてやがるっ・・・・・・くっ・・・・・・」ドサッ
主人公「ライバル・・・・・・おまえ・・・・・・」
ライバル「はやく行ってやれよ・・・・・・鬼子ちゃんは、お前が来るのを
・・・・・・待ってるはずだぜ・・・・・・おれじゃなく、お前を、な」
主人公「・・・・・・すまねえ、行ってくる!」ダッ
ライバル「ああ・・・・・・あれ、あいつ、あんなに足速かったっけな・・・・・・
もう霞んでで見えやがる・・・・・・ぜ。しかし今回はちいとばかり無理しち
まったなぁ・・・・・・・・・・・・後は頼んだぜ、主人公」ガクッ
海を越えて来た爆撃機が絶望を東の町へ降り注ぎ、灼熱地獄の中で人々は逃げ惑っていた。
古くからある鎮守の森にも火の手が迫り、熱風が木々の葉をざわめかせる。
町を見下ろす丘の高みで、着物を着た長髪の少女とおかっぱ頭の童女が紅蓮に染まる空と里を眺めていた。
「鬼子、ゆくのか」
見た目の愛らしさとは想像出来ないほどの冷淡な表情で、童女は正面を見たまま隣の少女に話しかける。
「はい」
『鬼子』と呼ばれる少女・日本鬼子は柔らかく微笑みながら童女の方を見た。
「ぬしが行かずとも、このいくさ、やがて終わろう」
「ちぃ姉ぇさまをお守りするのが、鬼子の役目ですから」
日本鬼子から『ちぃ姉ぇさま』と呼ばれた小日本は、不機嫌そうに鼻を鳴らした。
「ふん、守られずともこれしきで滅したりせぬわ。鬼子、人など助けてやらずとも良いぞ。人ごときが海を結ぼうなど数千年早いのじゃ」
激化して行くいくさを止めようと、人の心に住む悪い妖しを切り散らして来たが、全ては遅く止めさせることが出来なかった。
神の名を利用した人間たちに小日本は怒り、『いっそわしが滅ぼしてやろうか』と口にするようになっていた。
日本鬼子は少し首を傾げて、小日本を見つめる。
「でも、ちぃ姉ぇさまは人の子はお好きでしょ?」
「それは……それで別じゃ」
指摘されて小日本が口を尖らせる。小日本は普段姿を消しているが、鎮守の森へ子供たちが遊びに来たときだけは姿を現し、一緒に混じって遊んでいた。
昔は毎日のように遊びに来ていた子たちも、疎開で少しずついなくなり、森の奥に来るのは食料を探しに来る大人たちだけになった。
祠(ほこら)の上に座り、足をぶらぶらさせながら来ない子たちを待っている小日本の姿を鬼子はよく見ていた。
小日本がどう冷たく言い放とうが、どうしようもなく人を愛していることを日本鬼子は知っている。
「鬼子は、ちぃ姉ぇさまがお好きなものも守りたいのです」
「……勝手にしろ」
否定も肯定もせず、小日本は出陣の許可を出す。普段は大人しいが一度言い出すと日本鬼子の意思は変えられない。
「ゆくのは構わんが、いくさが終わればやることは山積みじゃ、必ず、帰ってこい」
「はい、いって参ります」
日本鬼子の角が光りながら伸びると、華奢な体がふわりと宙に浮いた。振袖と髪が風になびき、赤いもみじが日本鬼子の周りを舞う。
突風が吹き去り、本成りの鬼と化した日本鬼子を赤い空へ連れ去った。
舞い降るもみじの中、髪を揺らす小日本が空を見上げる。
本成りになった日本鬼子でも、人の欲が作り出した大火には敵わないことを小日本も知っていた。
「わしとぬしは離れても同体じゃ、鬼子。戻ったらこの世を結び直そうぞ」
――遠くで連爆の音が響く。
一番大きないくさはまもなく終わったが、日本鬼子の姿は鎮守の森に無く、祠(ほこら)の周りで遊ぶ子ども達の中に小日本の姿は無かった。
神の住むその森は深く長く眠りにつく。
身を分け与えた鬼が戻るその時まで。
女「はぁ……」
小日本「その物憂げなため息、恋ですね!」
女「誰?」
小日本「あなたの恋の手助け、させてください!」
女「宗教の勧誘?」
小日本「私のことはこにぽんって呼んでくださいね!」
女「聞いてないね、どうやって助けてくれるの?」
小日本「まずあなたが想い人と結ばれたいと一心に願います」
女「うん」
小日本「私がその想いをのせた矢を放ちます」
女「それで?」
小日本「あなたの想いが強ければあなたとその人は結ばれるでしょう!」
女「ふーん」
小日本「信じてませんね」
女「そりゃまぁ」
小日本「まぁ騙されたと思って試してください」
女「ちなみに無料?」
小日本「無料です!」
女「じゃあいいかな」
小日本「ほんとですか! じゃあ早速、想ってください、願ってください!」
女「……どうぞ」
小日本「いきます…………萌え咲け!」
女「本当に矢が飛んでった……」
小日本「すごいでしょう!」
女「うん、なんかよくわかんないけど」
小日本「それでは私に出来るのはここまでです、よい恋を!」
女「行っちゃった…………なんだったんだろ」
小日本「ふぅ、今日もいい仕事ができました。あ、姉さま、ただいまもどりました」
鬼子「おかえりなさい。こにぽん、私なんだか調子悪いみたい、急に胸が苦しくなって……とても切ない感じなの」
小日本「………………」
「さて、久方ぶりの休みの日、なにをするかのう?」
「乳の話をしようじゃないか」
「腰の話をせねばなるまい」
何をするでもなく、日本家屋の廊下を歩く鬼子の前に、颯爽とうざったく台所と空から現れたのはストーカー×2。
乳の話をしたがるヒワイドリに、腰の話をすることに使命感を持っているヤイカガシ。
ヒワイドリは翼を、ヤイカガシは柊の腕を広げ、鬼子の道を遮るかのように。 対する鬼子の視線は絶対零度である。
「……酒を手土産に、先代の鬼子にでも会いに行くか」
くるり、と無視され残される二匹。 滅しても幾らでも沸いてくるが、実害は0なのでこうされている。
「さて、乳の話ができないじゃないか」
「ふむ、腰の話が出来ぬというか」
向き合う二匹。 彼らは終生のライバルである。 乳と腰、永遠に同じく出来ぬ二つの優劣を競い、日夜争いを繰り広げているのである。
鬼子のそれに理想を見出したこいつらは、鬼子に付き纏っているのだ。
だがこの二匹、相性が悪い。
というよりも、鬼子との話を邪魔してくる(と思っている)片方を、大いに敵視しているのである。
「乳こそ真理! 母なる慈愛の象徴たる乳を差し置いて、男にもある腰など邪道じゃないか!」
翼を広げ威嚇するヒワイドリ。
「腰こそ至高。 次代を担う生命の素の源泉を省みずして、たかが栄養補給の道具に現を抜かすか」
柊の手を構え、誘い込む姿勢のヤイカガシ。
顔面は間が抜けているので分からないが、少なくとも二匹はマジである。 寧ろ二匹だけマジである。
「断じて否それこそ否! 大平原の小さな丘には風の吹く草原のような、天をつく巨塔には雄大なる深き森のような、乳には多種多様な魅力がある!」
「未熟。 浅薄甚だしき。 無節操な脂肪の塊を崇敬し、無きことを誤魔化すなぞ片腹痛い。 その点、腰は最上を求めるには肉付きの多すぎも少なすぎも許されぬ美術品。 比べることなどできようものか」
「墓穴を掘ったかヤイカガシ! 理想通りのモノしか見えぬ貴様の死んだ魚の目では真理など解さぬと知れ!」
「妄言を吐くなヒワイドリ。 至高を求める道を進むことも出来ぬ貧弱な鳥頭に崇高な我が使命、測れると思うな」
このように、日毎に喧々諤々の議論を交わしているのである。
そして、毎回険悪へとなっていき……
「「………………」」
距離をとり、向き合う二人。
両翼を刃状にして前面に固定し、そのままヤイカガシに吶喊するヒワイドリ。
くるりと攻撃に合わせて回転し、その鋭い柊の手でヒワイドリの首を狙うヤイカガシ!
カカカッ!
「二百、六十三戦……」 「二百六十、三……引き分け」
「また、決着がつかないじゃ……ないか」
「未だ、我も未熟。 ……仕留められぬか」
「「ぐはっ」」
ダブルノックアウト。
「本当、毎日なにしてるんでしょう、この二匹」
呆れ顔でそれを見ていたのは小日本である。 掃除道具に身を包んだその姿は、実に生活感溢れたものだ。
そして手元のチリトリには二匹の姿が。 羽が邪魔だわ生臭いわと邪魔なので、屋外に捨てるためである。
外に集めておいた落ち葉の上に、静かに二匹を寝かせる。 柔らかい自然の布団は心地良さそうだ。
「着火」
「「……熱っっっっぢい!!!!!」」
「二匹とも、家の中で羽を散らかしたり匂いをつけるのは駄目ですよ?」
ぬめった体と鳥の羽。 家を取り仕切る身としては面倒なことこの上ない。
家の中に入るなと何度言っても聞かぬので、次第に過剰になっていく仕置きをされる二匹であった。