えせ関西弁鬼子
日本鬼子は女子高生である!
今日も制服ばっかりの学校に朱紅葉柄の超ミニ着物と編み上げニーブーツで登校するのだった!
で、最初の舞台は生徒指導室。
ニーブーツを脱いだ日本鬼子が、硬くて冷たい床に正座して俯いている。
長くて艶のあるみどりの黒髪がさらりと垂れて眼を隠し、その表情は伺えない。
日本鬼子を見下ろすように仁王立ちした生徒指導の稲垣教諭通称ガキさんがドスを効かせた声をかけた。
「ゴルァ!日本ぉ、貴様何回いったらわかるんだぁ!」
「うーん……貴方のために歌うのがこんなに辛いなんて……zZZ」
謎の寝言をほざく日本の首がかくっと前に傾いだ。
「何の夢見てんだ……」
ガキさんはガイルみたいな軍人苅りの頭に青筋を浮かべて、
担当クラスのかったい学生名簿の角で日本のつむじを打ち据えた。
「あっー!!いったぁ…何すんのやガキさん!あたま悪なるやんか!」
頬を膨らませる日本鬼子。
その目は上目使いで睫毛が長く、馬鹿なガキなら騙せる魅惑に満ちていた。
自分の可愛さを理解して武器にするあざとさ。
「ああん?日本ぉ!ブリッ子やめんかぁ!お前は元から馬鹿なんだよゴルァ!!」
でもこっちのガキさんには通じなかった。
ガキさんは日本鬼子のコスプレ和装の袖を掴みあげた。
「んだこの服はぁ?制服着てこいっつってんだよ!!そんで、真剣の薙刀を学校に持ってくるな!!」
日本鬼子はにっこり笑って、
「ほんなら次ゃ長巻きにしますよって。もうゆるしてぇなガキさん、そろそろ頃合いやねん」
ガキさんは怪訝な顔。
「得物持ってくんなって言ってんだよ!頃合いって、なんか大事な用事があるのか」
「そや、歴史の授業が二限目にあんねん。あたし、歴史好きやん?」
「知らんわ、お前の好きな科目なんか。もういい、反省文五枚書いてこい。今週中に親呼ぶからな」
「あいあいさー。ガキさん、またなー」
日本鬼子はニーブーツを肩に引っ掛けて、そのまま廊下をぺたぺた走っていった。
「まったくどうしよもないな。日本みたいな奴を歴女と言うのだろうか。……ん?薙刀どこいった?」
ちゃっかり薙刀も担いで。