妄想モエチリ氏の無題作品
平安時代、一人の姫がその行き過ぎた愛によって鬼となった
彼女は般若として人々から畏れられた
しかし、400年の後に彼女は一人の武士により真実の愛を知る
そして現代、妖怪なんて幻想世界の生き物
現実にいるなんて言ったら病院へ連れて行かれる
そんな世界で暮らす般若の面を持つ妖怪少女のお話・・・ ∨1
田中「絶対あいつ、鬼子のことガン見してたって!マジでキモイよ!!」 ∨2
鬼子「えーハードルの測定なんだからフォームチェックしてたとか・・・?」
田中さんはあの体育教師は絶対におかしいということを引き続き力説している
適当に相槌をしながら、前方曲がり角に派手な格好をしているくせに変な格好ではなく
カッコよく見えてしまう無駄にイケメンな男を見つけてしまう
鬼子「あ、今日の夕食の買い物するの忘れてた!田中さんごめん先帰ってて!」
それなら今日は富士でセールをと言う言葉を置き去りに慌てて走り出す ∨3
今見かけた人物を追いかけて路地へ入る
背後に気配を感じると同時に胸に違和感を覚える
ムニュムニュ
卑猥鳥「この大きすぎもせず、小さすぎもせず、ベストなフィット感!やわらかさ!
品のある乳、すなわち品乳!!」
鬼子「!!!!!!!!!」
この糞変態鳥!誰の乳を揉んでやがる死ね死ね死ね100回以上どつき回してぶっ殺してやる!
と口を開く直前まではそう言おうとしていた
鬼子「ぃや!」
卑猥鳥「ぅぅーん、いつもながら可愛い反応!」
卑猥鳥「今日のお仕事もってきたよー」 ∨4
・・・数分後、路地に横たわるズダボロになった元イケメンを後にスーパーとは違う目的地へ向かう
街に流れる川の河川敷へ ∨5
鬼子「ここ?なんだか妙に魚くさい・・・」
卑猥鳥「そうだよーここが本日のお仕事場所」
鬼子「あんた、どこから出てきたのよ」
卑猥鳥「全ての乳は平等であるってことさ」
鬼子「まったく意味分かんない」
ガサガサ
川側の草むらから魚に足の生えて目がギョロギョロした珍妙な生き物が現れる
鬼子「これね、今日は5時から見たい再放送もあるしチャッチャと燃え散りなさい!」 ∨6
一瞬にして現れた薙刀を彼女は振るう ∨7
卑猥鳥「あっちょっ・・・」
パコーンッ
気持ちいい音と共に珍妙な生き物は空を舞った
卑猥鳥「話はちゃんと聞いてからじゃないとなぁ、大体この前だって同じようなことしてたよなぁ?」
鬼子「うるさいわね!あんたがちゃんと説明しないからでしょうが!」
卑猥鳥「俺はちゃんと言ったぞ、クライアントがここにいるって」
鬼子「嘘、絶対言ってない・・・」
卑猥鳥「それは俺をぶん殴るのに夢中で聞いていなかっただけだ」
ヤイカガシ「いいんですよ、誤解されるのは慣れてますから・・・」
二人は聞いていない
未だにギャーギャー言い合いを続けている
ヤイカガシ「あのあの、話を聞いてくださいよー」
卑猥鳥「で、依頼ってのはよく釣りに来ていた男の子が最近こない
様子を見てきてくれってそんだけ?」
卑猥鳥「そんなしょーもないことで呼んだの?乳の話なら付き合うが、そんなんじゃーなぁ」
ヤイカガシ「いやでも『影』が見えたんです、それからなんですよ
こなくなっちゃったの・・・恩人ですし心配で・・・」
鬼子「その『影』にツノのようなものが見えたのは本当なんですか?」
ヤイカガシ「はい!だからもう心配で心配で」
鬼子「ちょっ近い近い(ぁうー臭いー)」
ヤイカガシ「あ・・・すいませんすいません」
鬼子「はぁー鬼かも知れないなら一応、調べないとだめかー」
鬼子「特徴とか分かりますか?」
ヤイカガシ「はい!お願いします!」
ヤイカガシの説明を熱心に聞く鬼子のそばで既に興味を失った卑猥鳥が本来の姿にもどり
いつもの会議を開催し始めた
卑猥鳥A「今日の鬼子はどうだった?」
卑猥鳥B「うむ、前回より5mmアップだ」
卑猥鳥C「なんと!成長期だな!」
卑猥鳥D「ううむ、将来的なところはどうだ?」
卑猥鳥E「もうしばらくしたらブラを1カップ上げるべきかも知れん」
卑猥鳥F「なんと!それでは(r」
ヤイカガシの話を一時中断し、鬼子にお空のお星様にされる卑猥鳥たち
そんな秋の夕暮れ
数日後、見つけたとの知らせを卑猥鳥から受けて3人で商店街へ向かう ∨8
卑猥鳥「ほら、あの子だろう?」
ヤイカガシ「そうです!よく見つけましたね!」
ヤイカガシ「・・・なんだか、ずいぶんやつれたような」
卑猥鳥「鳥ネットワークを甘く見てもらっては困る」
二人とも今は人間の姿だ
派手な服装の男と着物を着た純和風の男 ∨9
異質な服装の男二人というだけでも目立つのに二人ともイケメンとくれば更に周囲の視線が集まる
本来の姿を知る鬼子は絶対に間違っていると強く思う
アリエナイアリエナイ
ヤイカガシ「どうしましたか?」
鬼子「!!!(真っ赤)」
ドガッ!
ヤイカガシ「ぶほっ」
卑猥鳥「不用意に鬼子に近づくからだ、意外と凶暴なんだよソイツは」
ヤイカガシ「いや・・むしろご褒美です」
不意に目の前10cm近くまでイケメンに近づかれたら誰だって戸惑う
そう誰だって誰だって・・・
本来の姿を思い出し、心を落ち着かせる
二人は目立つ上に鬱陶しいので取り合えず、追い返した
鬼子は男の子を観察し始めた
自販機のつり銭口を確認して回っているようだった
最初に見つけたのは商店街をうろうろしている所だった
自販機を巡りながら住宅地の方へ向かっている
服も良く見れば薄汚れている
ヤイカガシの話では釣りへは父親とよく来ていたと言う
今の男の子は両親がいるような子には見えない
まるで・・・鬼子はその考えを振り払う
現代日本ではそんな子はどこかで保護されるはずだ
すっかり日が落ちた
それなのに男の子は家へ帰る様子がない
人気のなくなった公園のベンチに座り込んでいる
座っている間に2度、水飲み場へ行った
喉が渇いたにしてもずいぶん長い間、水を飲んでいた
鬼子は意を決して男の子へ声をかけようと近づいた・・・
鬼子「あの・・・」
ビクンッ
男の子「あっ!あの、大丈夫です!もう家に帰りますから!」
この反応で鬼子は確信する
鬼子「あー誤解しないで、私はそんなんじゃないから」
鬼子「第一そんな人に見えるかなー?」
男の子「・・・見えない」
鬼子「んふーそうでしょ?実はちょっと困ったことがあって君に助けてもらいたいの」
鬼子「この近くの商店街にね、新しくからあげ専門店が出来たらしいの」
鬼子「んで、そこのお店のとりからがすっごいおいしいらしいんだけど、場所が分からなくて・・・」
鬼子「君、場所しらないかな?」
男の子「知っているよ、行きたいの?」
鬼子「ぉーやった、んじゃ案内してくんないかな?お礼するからさー」
男の子「うん、いいよ」
鬼子は件のから揚げ屋の前でじーっとから揚げを買う客を見る男の子を思い出しながら
今日はちょっと遅くなっちゃったし、一品くらい手を抜いてもおっけーとか考えていた
鬼子は男の子と一緒にから揚げ屋へ行き、ついでに富士スーパーへ寄って食材も追加した
買い物をしながら男の子の名前はA君、小学1年生でお父さんはコンピュータ関係の仕事をしていて
(なんかカタカナばっかりの言葉が出てきて鬼子は半分も理解出来なかった)
お母さんは専業主婦、世間話をしながら聞きだした
買い物に付き合ってくれたお礼に夕食をご馳走することも約束した
鬼子「やっぱり少し持つよ?」
A君「んっ大丈夫!」
買い物の荷物を持つと言って聞かなかったのだ
ちょっとヨタヨタ歩く姿に愛い奴、愛い奴と頭を撫でてみる
鬼子「さぁここが私の家」
A君「えっ・・ここ神社だよ?」
鬼子「母屋は裏手なんだ、こっちこっち」
ガラッ
鬼子「ただいまー」
A君「・・・おじゃまします」
「ねーちん、おっそーい、ハラペコだよー?」
うぉん!
奥から真っ白で大きな老犬に跨った少女が出てくる
ついこの間まではねーさまと呼んでくれていたのに、最近はねーちんだ
その元凶となった変態鳥を思い出し、また少しムカムカする
鬼子「ごめーん、ちょっと買い物で時間かかっちゃって」
A君「ぉぉぉぉぉぉお!すっげーでけー!!」
小日本「ふふん、いいでしょー?」
日本狗「うぉん!」
A君「俺も俺も!乗れるのか!?」
二人と1匹で盛り上がり始めたのでA君から荷物を受け取り台所へ向かう
夕食の準備が出来るまで任せよう・・・
鬼子「んで、なんであんたまでいるのよ?」
卑猥鳥「労働には対価が必要だ、なんだったら乳で返すか?」
鬼子「それは絶対に嫌」
鬼子「ついでにそれはとりからなんだけど?」
卑猥鳥「ん?うまいぞ?」
そーですか
小日本「とっりから!とっりから!んふー」
A君「バクバクバクバク」
鬼子「ほらほら、小日本、お箸で刺して食べちゃ駄目でしょA君に笑われるよ?」
小日本「んゆ?うぬぬぬぬ」
小日本はA君を見習い箸でつまんで食べることに挑戦を始めた
相変わらず愛くるしい
夕食のかたづけを終えて居間へ行くと
日本狗の腹に抱えられるように二人とも寝ていた
寝ている小日本のほっぺを思わずつんつんしてしまう
ぷにぷにだ
にへらっと笑みがこぼれるのが自分でも分かる
日本狗「せっかく寝かしつけたのに起きてしまうぞ」
鬼子「あら、おじいさまも一緒に寝てしまったのかと・・・」
鬼子「で、どうでしょうか?」
日本狗「確かに鬼の匂いがするのぉ、だがこの子ではない」
日本狗の言葉で寝ているA君を見る
ふとそこで二の腕にまるい火傷の跡を見つける
日本狗「なんじゃ、気づいておらんかったのか?」
日本狗「この子の体は火傷の跡だらけじゃ」
鬼子「!」
卑猥鳥「こりゃタバコの火だな・・・」
鬼子「・・・」
卑猥鳥「考えてもいなかったって顔をするな、十分予想されたことだろう?」
ビギッ
鬼子「・・・行くわよ」
「どこへ?」とおどけて答えようとした卑猥鳥は紅い視線に遮られて
その言葉を飲み込んだ
住宅街、アパート
部屋に明かりは灯っていない
鬼子「ここね、留守じゃないの・・・」
当然、ドアに鍵が掛かっている
力に任せてこじ開けようと更に力を込める
卑猥鳥「おいおい、ぶっ壊す気かよ」
卑猥鳥「ちょっと俺に任せな」
卑猥鳥は手だけを器用に元の羽の形へ戻す
その羽を鍵穴に入れること数十秒
カチャリ
鬼子「呆れた、あんたそんなことも出来るの?」
卑猥鳥「調べ物に必要なスキルだから身につけたまでだ」
鬼子はその言葉に違和感を感じたが、今はそんな場合ではない
ドアを開け中へ入る
部屋の中はこれでもかというくらい散らかっており異臭が立ち込めていた
奥の部屋に通じる廊下にはゴミも衣類もあらゆるものが雑多に積み上げてある
卑猥鳥「うへぇくせぇ、マジかよ」
鬼子は卑猥鳥の声を無視し、奥へ
そこはダイニングキッチンだった
ゴミを掻き分けるように部屋の中へ入る
まずは冷蔵庫の中も確認する
からっぽだ、本当に何もない
キッチンへ向かう
調味料は砂糖と書かれたビンが洗ったようにからっぽになっていた
ガスは使えなかった、元栓が閉めてあるのだろう
見当たる場所に元栓はない
そこでひときわ異臭を放つそれを見つけ、絶句する
フナの死骸だ、半分ほど骨が出ている・・・そこで気づく ∨10
―――フナを食べたのだ、生で
鬼子「ぅえ゛・・え゛っ」
湧き上がる感情を抑えきれない、涙がどうしようもなく溢れ出す
買い物中に聞いた彼の言葉を思い出す
鬼子「お父さんとお母さんは好き?」
A君「うん、大好きだよ!」
笑顔でそう答えたのだ、即答で迷うことなく
しばらく泣いていると段々落ち着いてきた
どうして?何故?
答えは見つからない
そばに割れた写真立てがあることに気づく
そこでは3人の親子が幸せそうに笑っていた
臭いがたまらなかったのだろう、元の姿となった卑猥鳥が部屋に入ってくる
卑猥鳥「貯まった新聞の量からいって、一週間は帰ってきてねーな」
卑猥鳥「虐待に育児放棄ってか?本当に人間って奴は度し難い」
ビキビキッビキッ…ビギンッ
大きな二本の角、紅の瞳、般若の面、紅葉柄の着物・・・・ ∨11
―――そこに一匹の鬼が現れる
日本鬼子「案内せい」
刺すような紅い視線に卑猥鳥は思わず身震いする
卑猥鳥「対価が必要になるぞ?」
日本鬼子「構わぬ」
卑猥鳥「即答かよ、こりゃ本鬼モードだな・・・」
住宅街を少し離れた鉄塔の上
そこで日本鬼子は知らせを待っていた
バササッ
卑猥鳥「母親を見つけた、他所の縄張(シマ)だ」
卑猥鳥「騒ぎを起こすと後々面倒だぜ?」
日本鬼子「構わぬと言った」
卑猥鳥「・・・新宿だ」
卑猥鳥「カラス共の話だ、大丈夫だろうよ」
―――秋の低い三日月の下、着物の裾から紅葉を散らし鬼が舞う
新宿、雑居ビル内のバー
A母「だからぁ〜私は寂しいって言ってんのよ〜」
―そうだな、旦那が悪い
バーテン「そろそろ終電ですよ、お客さん大丈夫ですか?」
A母「終電?」
―帰ったらA君でまたストレス発散だ
A母「嫌・・・」
A母「帰るのは嫌・・・」
バーテン「まぁうちは朝までやってますけどね、お客さんほどほどにね」
バーテン「ずいぶん酔ってらっしゃいますよ」
―全部、旦那と子供が悪い、そうだろう?
A母「・・・」
ヒュガ!
ビル地下内のバーなのに風が吹き抜ける
A母「?」
雑居ビル屋上
囁鬼「痛え!いっってーーーー!!何しやがる!!!」
薙刀の刃に貫かれた小さな鬼が叫ぶ
日本鬼子「五月蝿い、質問に答えよ」
日本鬼子「何故、彼女に憑いている?」
囁鬼「テメエにカンケーねーだろーが!!離せ!離せよ!!」
日本鬼子「質問に答えよ」
囁鬼を貫いた刃に炎が灯る
囁鬼「ギャーーー!!」
日本鬼子「おまえは従鬼だな、主鬼はどこだ?」
日本鬼子「早く言わないと燃え尽きるぞ」
囁鬼「分かった、言う!言うから!止めてくれ!!」
刃の炎が消える
囁鬼「俺はあの女が邪魔だからしばらく家に帰すなって言われただけだ」
囁鬼「それ以上の理由なんてシラネェ!」
日本鬼子「主鬼は?」
囁鬼「言える訳ねーだろーが!」
囁鬼「てめーだって鬼じゃねーか!?同族になんてことしやがる!」
日本鬼子「私はこの面に誓って動く、同族なぞ知ったことではない」
日本鬼子「答えられないと言うのなら、仕方ない」
日本鬼子「燃え散るがいい」
ボッ
一瞬にして囁鬼は燃え尽き灰となって消える
卑猥鳥「さっさとやっちまって良かったのか?」
日本鬼子「従鬼は主鬼を契約により裏切れん、内容にもよるがな」
日本鬼子「あれ以上は時間の無駄だろう」
A母はカウンターに突っ伏していた
・・・もう何も考えたくない
―お父さんとお母さんは好き?
―うん、大好きだよ!
はっと顔を上げる
A君!
ぼんやりとしていた意識が次第にはっきりしてくる
夫に構ってもらえない憂さでA君につらく当たってしまったこと
A君につらく当たるのが嫌になって帰らなくなってしまったこと
携帯を見る
帰らなくなって一週間にもなる!
急に血の気が引く、自らの行っている行為に恐怖した
帰らなくてはっ
終電は既に終わっている
泥酔した体は思った以上に動かない、それでも彼女は重い体を引きずり店を出る
外へ出たところで躓いて転んでしまう
バックの中身が散乱する
のろのろと落ちたものを拾い、バックへしまっていると
少女が声をかけてきた
鬼子「大丈夫ですか?手伝います」
A母「ありがとう」
感謝の言葉を残し、彼女はまた歩き始める
卑猥鳥「さて、次はどうする?」
日本鬼子「次?まぁ次にいく所は決まった」
そう言って日本鬼子はA君と同じ苗字の名前が入った
名刺をひらひらさせた
都内、とあるメーカー本社(深夜)
A父「皆、すまない・・・10分ほど集まってくれ」
ディスプレイを見ながらカタカタとキーボードを打つ手を休め ∨12
のろのろと数人が集まる
A父「良い話と悪い話がある、どちらから聞く?」
SE1号「・・・悪い話から」
A父「大陸に任せていた制御系、うちのチームで作り直すことになった」
PG1号「またですか!」
PG2号「あー(目がうつろ)」
PG3号「明日の日曜くらいは帰れると思ってたのにな・・・いや、もう今日か・・・」
SE2号「訳を聞かせてください、既に大陸から納品されたゴミソースの修正を半分以上
俺たちがやっているんですよ?」
A父「大陸で大陸制御系チームのテコ入れをやっていた同僚Bが入院した」
A父「これから話す良い話も絡むが結果、うちで引き取ることになったんだ」
SE1号「良い話ってのはなんです?」
A父「大陸にオフシェアするのは今回のプロジェクトで最後だ」
一同「おおーーー!!」
やったこれで開放されるなど、小さな歓声が上がる
A父「私と課長で作成していた報告書が幹部会で承認されたんだ」
A父「大陸に任せた分のほぼ全てを日本側で修正していて結果としてコストダウンどころか
コストアップになっている点、なによりプロジェクトのライブラリを丸ごとコピーして
大陸へ盗み帰っていた事実が効いた」
A父「PG3号はよく気づいたな」
PG3号「ええ、開発機の具合が悪いからWindowsの再インストールしたいってDVD持って行ったんで・・・
OS再インストールすりゃドライブ使えなくしてあるセキュリティソフトも消えますからね」
A父「そんな訳で今からでも極力、大陸側には仕事を回さないことになった」
A父「これで最期だから、皆もう少し頑張って欲しい」
A父はそう言って頭を下げた
SE1号「割当てはどうします?」
A父「ああ、今から作るよ」
A父「すまないが、皆の進捗状況を纏めておいてくれないか?」
SE1号「分かりました」
SE1号「割り当て、また自分の分を一番多くなんて無茶な真似はやめて下さいよ?」
SE1号「主任、もう一ヶ月以上帰ってないんでしょう」
A父「・・・大丈夫だ」
―そうだ、お前が持ってきた仕事だ、やらなければならん
A父はそう言ってまたディスプレイへ向かう
割り当てを作り始める
ああ、ここはSE2号には少し重いか?
―そうだな、お前がやらないとまずそうだな
んーここはPG3号に任せるとしてSE1号の分担が多いか・・・
―お前が受け持ってやれ
設計書は同僚Bが大陸向に直していたものをサーバワークの中から見つけた
おーこれは助かる・・・あいつも分かってたんだな
しかし、ここまで書き込んでやらんと駄目とは・・・もうほとんどソースを
日本語化したようなもんじゃねーか
よし、これでいいか
もう1ヶ月か・・・今日はこれを作ったら一度帰るかな
―今日からやれば、1日早く終わるぞ
そうだな、A君はA母もいるし大丈夫か
―そうそう
ヒュガッ
―おおっと
―あぶねぇ誰だ?
鬼は今の攻撃を仕掛けてきた奴を追いかけビルの屋上へ床から生えるように現れる
ズズズ
魘鬼「俺様の邪魔をするやつは誰だ」
卑猥鳥「エンキか、ここいらじゃ珍しいな」
日本鬼子「私だ」
魘鬼「ふん、同族じゃねーか、何の用だ?」
日本鬼子「この面に従い、お前を滅する」
魘鬼「般若の面・・・か?」
魘鬼「裏切り者の清姫に縁あるものならば、致し方あるまい」
答えず、日本鬼子は薙刀を振るい躍り掛かる
上段からの袈裟斬り
ヒュッ
返して下段払い
ザシュッ
魘鬼の脛から黒い血が滴り落ちる
魘鬼「いてぇじゃねーか、よっ」
日本鬼子「!」
足元から気配を感じ、日本鬼子はその場を飛びのく
魘鬼「ほぅ・・感が良いな」
屋上の床からは黒い触手が無数に生えていた
日本鬼子「周りに変態が多くてな、自然こういうのには感が良くなる」
ため息混じりに彼女は答える
どうしてこう自分に関わるものには変態的なやつが多いのだろうか
まだ見ぬ運命とか宿命とかの神に会ったら絶対にブッ飛ばしてやる
日本鬼子と魘鬼の戦いは続く
魘鬼は触手で彼女を捕らえようと無数の触手を振るい、日本鬼子はその触手を
炎を宿した薙刀で振り払う
もう何本も断ち切った触手だが、一向に数は減らない
しばらくすると再生するからだ
卑猥鳥A「いやー白熱した戦いですなー」
卑猥鳥B「そろそろサービスシーンがあってもいいんじゃね?」
卑猥鳥C「そうですな、触手に縛られた乳とか?」
卑猥鳥D「王道ですな、王道が故に飽きられた感じもするが」
卑猥鳥E「王道こそ正道との言葉もある、由緒正しき萌えには賛同せねばなるまい」
日本鬼子「そこっ!馬鹿やってないで少しは手伝え!」
卑猥鳥A「無理」
卑猥鳥B「そうそう、我らは戦うようには出来ていない」
卑猥鳥C「まー逃げる役なら任せてよ」
卑猥鳥D「むしろ、そろそろ触手に捕まってもいいんじゃね?」
卑猥鳥E「うむ、もう捕まるべきだな」
日本鬼子「貴様ら、どっちの味方だ!」
卑猥鳥一同「「乳の味方です」」
イライラっとして一瞬の隙が出来る
魘鬼はその隙を見逃さなかった
日本鬼子はついに触手に捕まる
卑猥鳥一同「「キターーーー!エンキGJ!!!!!」」
魘鬼はドヤ顔になっている
日本鬼子はあとで絶対に変態鳥も滅してやると心に誓う
触手は素早い動きであっという間に日本鬼子を縛り上げる
日本鬼子「くぁ!」
卑猥鳥A「おーはだけた着物に絶妙な位置で縛り上げたな」
卑猥鳥B「マニアだな・・・職人技だ」
卑猥鳥C「後手縛りの変形か、胸が強調されるように計算しているな」
日本鬼子「ほっっんと!貴様ら後で絶対、燃え散らす!!!」
羞恥に真っ赤になり、ちょっと涙目になりながら叫ぶ
魘鬼「くははははっ、残念だったなぁあんなのが味方とはな!」
魘鬼「さて、このまま絞め殺してやろうか」
ギチギチッ
日本鬼子「くっぅ・・・」
卑猥鳥E「せーの♪」
ゴズンッ
卑猥鳥Dを発射台に卑猥鳥Eの鋭いくちばしが魘鬼の背中にめり込む
魘鬼「ぐはっ!!!!!」
卑猥鳥A「でもそんなんじゃ、だーめ」
卑猥鳥B「もうそんなんじゃ、ほーら」
卑猥鳥C「お乳は進化するよ」
卑猥鳥D「もっと〜もっと〜」
※JASRAC申請済(嘘)
魘鬼「キ・サ・マ・らーーー!!」
魘鬼の注意が卑猥鳥たちに向かい、触手が緩む
スルリと日本鬼子は触手から逃れ、猛ダッシュで魘鬼へ肉薄する
魘鬼「しまっ!」
日本鬼子「燃え散れ!!!!変態!!!!!!」
ズバンッ
羞恥の怒りに任せた一撃は魘鬼を一刀両断する
「・・・くん・・・A父くん」
ハッとして目が覚める
課長「君もだいぶ疲れているようだね」
課長「皆、そのままでよいので手を休めて聞いて欲しい」
チームメンバーが座ったまま、課長の方へ向き直る
課長「大陸オフシェアの件、追加の制御系の件、A父くんから聞いていると思う」
課長「幹部会で承認されたことによって、スケジュールは全体的に見直しだ」
課長「今日を含め月火とこのチームは全員、休みとする」
課長「みんな、始発で帰りたまえ」
歓声が上がる
A父「課長、しかしそれでは!」
課長「君も休みなさい、これは業務命令だよ」
カサッ
これは紅葉の葉?なんでこんな所に・・・
紅葉の葉に添えられるように3人の家族が幸せそうに笑っている写真があった
課長「SE1号くんから聞いたよ、1ヶ月以上帰っていないそうじゃないか」
課長「君だって家族のために働いているのだろう?」
A父「・・・そうですね」
A父「でも、よかったんですか?勝手に休みにしてしまって」
課長「なに責任は私が取るよ、そのための課長だ」
妻と息子の顔をたまらなく見たくなってきた
―帰ろう、家へ
日曜の朝 神社
鬼子「気をつけて帰ってね」
小日本「ばいばーい」
日本狗「うぉん」
A君「うん、朝ごはんもありがとう」
A君「ばいばーい」
A君は小走りに鳥居を抜けたあと、しばらく下を向いて佇んでいた
意を決したような顔でまた小走りに戻ってくる
A君「あの・・・」
鬼子「ん?」
A君「また、遊びに来てもいい?」
鬼子「もちろん!もう私たち友達でしょ?小日本も喜ぶわ」
小日本「またこいー」
小日本もピョンピョン跳ねながら答える
A君はパァっと笑顔になる
A君「んじゃまたくるね!」
A君「またねー!!」
小日本「またねー」
今度こそ、A君は鳥居の向こうへ消えていった
鬼子はA君が家族を取り戻すことが出来るよう・・・静かに祈った
――数日後
ガラッ
鬼子「ただいまー」
―鬼子、ちょっと社務所まで来るんじゃ
なんだろう?
鬼子は鞄を自室へ置くと神社の社務所へ向かう
社務所に入ると日本狗、小日本、卑猥鳥、それにヤイカガシが居た
全員、元の姿だ
自然に習い鬼子も元の姿に戻る
といってもちっちゃい角に着物姿になるだけだが・・・
日本狗「今なヤイカガシから報告と相談を受けていたんじゃ」
日本狗「で、結論をお前にも伝えねばならん」
日本狗「ヤイカガシ、もう一度ですまないがあの少年のことを伝えてやれ」
ヤイカガシ「はい、分かりました」
あの少年の親子が3人で河川敷に釣りにきたこと
両親に囲まれとても幸せそうだったこと
ヤイカガシはうれしそうに仔細に話した
日本鬼子「そう・・・よかった」
卑猥鳥「なんだぁ泣いてんのか?」
日本鬼子「うるさい、あんたは黙ってなさい」
日本狗「それとな、ヤイカガシに神社の池へ移住することを許した」 ∨13
日本鬼子「えっ!」
日本狗「聞けば河川敷はもう我らが住むには難しい環境、本人も是非にもと言うのでな」
日本鬼子はまとわり憑くような嫌な視線とオーラを感じた
ヤイカガシだ
ブルッ
日本鬼子「おじいさま、それはっ!」
日本狗「ここの土地神であるワシが決めたことじゃ」
そう言われては黙るしかない
ヤイカガシ「でへ、よろしくお願いします〜」
卑猥鳥「そちらの話は終わったな」
卑猥鳥「鬼子、大切な話がある」
日本鬼子「なによ?」
卑猥鳥「成長期にスポーツブラは駄目だ、形が崩れる危険性がある」
日本鬼子「ちょっ!なんでしってんのよ!!」
そこで気づく、最近下着をしまった位置が時々変わっていることに
部屋には鍵もかけているし気のせいだと思っていた
が、あの時、卑猥鳥は簡単に部屋の鍵を開けていた
一瞬のうちに手に炎の宿った薙刀が現れる
日本鬼子「貴様かー!」
日本鬼子は必死に薙刀を振るうが、卑猥鳥はその素早い動きで
余裕で回避していく
卑猥鳥「ふっ当たらなければどうということはない」
ますます攻撃は激しくなった
ヒョイっと卑猥鳥が避けた先にヤイカガシがいた
かろうじて刃を当てることは逸らしたが、炎でヤイカガシがいい感じに焦げる
ヤイカガシ「おぉうふ!」
ビクンッビクンッ
日本鬼子「ご、ごめん!」
卑猥鳥「あーあーノーコーン〜」
貴様のせいだろ!と卑猥鳥を追いかけ社務所の外へ
小日本「ねーちん、喧嘩はめっだよー」
マグマグ
小日本はこんがりと焦げたヤイカガシにかぶりついている
ヤイカガシ「あっあっあっ」
日本狗「小日本、それは食べ物ではないぞ」
日本狗「ヤイカガシも嬉しそうにするでない」
日本狗はまた変なのが増えてしまったか、と嘆息する
さっきまではまともな奴だと思っていたのじゃが・・・まぁよいか
今日は秋晴れのよい日だった
―――――――――――――――とりあえず、了