妄想モエチリ氏の無題作品2
平安時代、一人の姫がその行き過ぎた愛によって鬼となった
彼女は般若として人々から畏れられた
しかし、400年の後に彼女は一人の武士により真実の愛を知る
そして現代、妖怪なんて幻想世界の生き物
現実にいるなんて言ったら病院へ連れて行かれる
そんな世界で暮らす般若の面を持つ妖怪少女のお話・・・
♪〜♪♪〜
日本狗「ほぅ・・」
小日本「ねーちん、きれー」
ピョンピョン
日本鬼子「えへへ」
ヤイカガシ「ほら、よそ見しちゃ駄目ですよ」
日本鬼子と人の姿となったヤイカガシは社務所で神楽を舞っていた
♪〜シャン
小日本が大喜びで一生懸命拍手する
日本狗「見かけによらぬものだな」
ヤイカガシ「昔、人間に教えてもらったんですよ」
ヤイカガシ「なんだったら白拍子もいくつか知ってますよ」
日本鬼子「どうでしたか?おじいさま」
ほほを少し上気させた日本鬼子は訪ねる
日本狗「よく出来ていた、やはり血かのぉ」
ヤイカガシ「ええ、筋がよいですね」
日本鬼子は満面の笑みだ
日本鬼子「ねぇヤイカガシさっきのところなんだけど」
ヤイカガシ「ああ、それなら」
ヤイカガシは日本鬼子の後ろにまわり、右手に右手を重ね
腰に手をやり、手取足取り指導を始める
ガンッ
ヤイカガシ「をごっ!」
日本鬼子「ちょっと!卑猥鳥、邪魔しないでよ!」
卑猥鳥「けっ」
人の姿のまま卑猥鳥は日本鬼子に近づき、おもむろに胸を揉みしだく
日本鬼子「なっ!!」
ポンッと元の姿に戻り、脱兎のごとく逃げ出す
いつもの鬼ごっこが始まり、数分後にはこんがりと焼き鳥の匂いが神社に漂う
日本狗は本当に見かけによらぬものだと考えた ∨1
白拍子を人間に習ったということはそれだけ年経た妖怪であるということだ
ヤイカガシが大妖とはな・・・
学校、五時限目・・・数学
食後の昼過ぎ、ただでさえ眠くなる時間帯に数学という時間割を考えた人間は
きっとサディストに違いない
さっぱりと頭に入らない公式を眺めるのを諦め、気晴らしに校庭を見る
校庭の隅を足の生えた魚が疾走している
その後ろには追走する猫
ガタッ
鬼子「なっ!」
数学教師「どうした?」
鬼子「あっ・・す、すいません、何でもないです」
数学教師「校庭を眺めるのもよいが、ココは期末に出すぞ」
ばれてた
教室が小さな笑いに包まれる、鬼子は小さくなって授業に集中することにした
田中「めずらしいじゃん、鬼子が注意されるなんてさ」 ∨2
田中「外にいい男でもいた?」
授業後、田中さんが声をかけてくる
鬼子「そんなんあるわけないでしょー」
田中「まぁいいや、それよか今日、横浜行かない?」
そういってある中華店の点心デザート&スイーツ特集記事を見せてくる
校庭の隅でヤイカガシは猫にかじられながら走馬灯を見ていた
ヤイカガシ「し・・しま・・・ぱ・・・つ」
口から白濁液をよだれの様に垂らしながら不思議と幸せそうな声で・・・
APEC開催中で2万人の増員警官で溢れかえる横浜、とあるビジネスホテル
警官「馬鹿な真似はやめるんだ!そんなことをしたって何も解決しない!!」 ∨3
両手両足を拘束された警官は学生時代の後輩へ向かって叫ぶ
海保隊員「すみません、先輩」
海保隊員「俺はもう我慢が出来ないっ」
ムグッ
海保隊員は警官の口を猿ぐつわで塞ぎ、ユニットバス内に拘束する
―そう、もうお前がやるしかない
―死んだ親友のため、映像を公開し逮捕された仲間のため、なにより日本のために
―全てを隠し、日本を貶め続ける奴らに思い知らさなければならない
海保隊員は怒りで視界が真っ赤になっていくことを自覚した
警官の服を着て、拳銃の残弾も確認する
警備予定位置も確認・・・絶好の位置だ
彼は親友の顔を思い出す
あいつだって死ぬ覚悟はあった、日本を守るという目的のためなら
だが、どんな権利があって彼の死を汚す?
―許されない
そう、そんなことは許されない
彼は暗い決意を胸にビジネスホテルを後にする
横浜、みなとみらい地区
田中「あっれー?絶対こっち近道だと思ったんだけどなぁ」
鬼子「明らかに中華街から遠のいている気がするよ」
田中「電車賃もったいないからって横浜から歩こうとするのが失敗だったかなぁ」
鬼子「はぁ・・・」 ∨4
田中さんに道案内を全て任したことに後悔する
既に現在位置は不明、周りは空き地で寂れガードレールには落書きが一杯だった
田中「仕方ない、お金かかるから嫌だったけど携帯のGPSMAP使う」
鬼子「へぇそんなのあるの?」
田中「ふふーん」
カコカコっと田中さんは携帯を操作し始める
鬼子も興味をもって一緒に覗き込む
腰パン「道に迷ってんのか?」
鼻ピアス「なんなら俺たちが案内してやんよ?」
案内される先が不安で仕方のない二人組が声をかけてきた
鬼子「ありがとう、でももう道分かりましたから」
鬼子「行こう、田中さん」
田中「う・・うん」
明らかに怯えている田中さんの手を取り、その場を立ち去ろうとした
ガシッ
鼻ピアス「そんなこと言うなよ、どこだって案内してやるからよ」
田中「あっあの!困ります!」
あーやっぱきた
心の中で一人ならどーでもなるけど、今は田中さんいるしなーと思案する
思案しているのを何か勘違いして更に肩にまで手を回してきた
鼻ピアス「俺たち、こー見えて紳士だから大丈夫だって」
腰パン「そーそー」 ∨5
そろそろ叩きのめしてやろうかと考えていた時、着物姿のイケメンが声をかけてきた
ヤイカガシ「あーいたいた、探しましたよ」
ヤイカガシ「さぁいきましょうか」
鬼子はのることにした
鬼子「あ、先生、どこいってたんですか?もー」
ヤイカガシ「いやーすいません」
鬼子「(田中さん、あいつは知り合いだから大丈夫)」
鬼子「行こう、田中さん」
田中「うん」
田中さんがなんだか目がハートになっている気がするが、気のせいだと信じたい
3人でその場を離れようとする
腰パン「ちょっと待てや!」
鼻ピアス「なにカッコつけてんだ、あぁ!?」
ゴンッ…ゴトリ
ヤイカガシ「ぐふっ」
田中「ああ!大丈夫ですか!?」
弱い!弱すぎるよ!せっかくカッコよく出てきたのに!ヤイカガシ〜!
鬼子は心の中で涙した